急な配送が必要になり運送業者に相談したいけど、どこまで無理を言っていいかわからない。
突発的に荷物を送らなければいけなくなった経験がある方は、こんな風に悩んでいませんか?
運送会社やドライバーが安全に運送できないような、無理な依頼をすると「荷主の安全配慮義務」に違反する可能性があります。
今回の記事では「荷主の安全配慮義務」について、徹底的に解説します。
ルールが整備された背景や詳細な内容、配慮する具体的な方法などを紹介します。
「荷主の安全配慮義務」を知らない人でも分かりやすいように、丁寧に解説しますのでぜひ最後までご覧ください。
荷主の安全配慮義務とは
「荷主の安全配慮義務」とは、荷主が運送業者の安全な配送に関して負うべき法的・倫理的責任のことを指します。
貨物の所有者または発注者である荷主は、運送中に発生する可能性のある危険を最小限に抑えるために、適切な配慮をしなければいけません。
2018年の改正貨物自動車運送事業法で新設され、2019年7月から施行されています。
この配慮義務は人手不足が深刻化する運送業界において、ドライバーがより働きやすい環境づくりを目的としています。
運送業者だけでなく荷主も、ドライバーが安全で安心して働ける環境づくりのために、無理な依頼や作業指示をしないことが求められています。
「荷主の安全配慮義務」をさらに理解するために、制度の内容を詳しく解説します。
荷主勧告制度の拡充
改正前の規定では、対象となる運送事業者は「一般貨物自動車運送事業者」と「特定自動車運送事業者」のみでした。
※ 一般貨物自動車運送事業者:国土交通大臣または地方運輸局長の許可を得た事業者
※ 特定自動車運送事業者:特定企業の貨物を専門的に運送する事業
改正後は、軽トラックやバイクを使って貨物を運ぶ「貨物軽自動車運送事業者」も、荷主が配慮すべき対象者として追加されました。
また違反した場合のペナルティも従来は荷主への勧告だけでしたが、改正後は勧告のうえ企業名が公表することとしています。
コンプライアンスに対して敏感になっている中で、ルール違反をした企業として公表されるのは大きなダメージとなります。
違反をした場合のペナルティ
「荷主の安全配慮義務」に違反している疑いがあった場合、以下の流れで企業名が公表されます。
- 国土交通大臣と関係行政機関で疑いのある荷主に関する情報を共有
- 国土交通大臣が、関係行政機関と連携して荷主に働きかけ
- 国土交通大臣が、関係行政機関と連携して荷主に要請
- 国土交通大臣が、関係行政機関と連携して勧告のうえ企業名を公表
もし「働きかけ」や「要請」の段階で状況が改善されれば、次のステップへ進むことはありません。
また荷主が独占禁止法に違反している疑いがある場合は、公正取引委員会へ通知されるケースもあります。
荷主の安全配慮義務が新設された理由
ここでは、なぜ荷主の安全配慮義務が新設されたのか、以下の3つに沿って解説します。
- 物流を支えるドライバーを守るため
- トラックドライバーの減少と高齢化
- 拘束時間の増加
背景を知っておくことは、ルールを深く理解するために必要ですのでチェックしておきましょう。
物流を支えるドライバーを守るため
ひとつめの理由は、物流業界におけるドライバーの安全と福祉を守るためです。
物流業界は、商品や物資を効率的に配送することで円滑な供給の仕組みを守っています。
しかし経済の発展に欠かせない運送ドライバーの仕事が、危険で劣悪な労働環境だった場合どうでしょうか。
休憩もできないようなギリギリな到着時間を指示されたり、積載量を超える荷物の運送を指示されたりしては、ドライバーとして働きたい人も減ってしまうでしょう。
そんな状況を改善するために導入された「荷主の安全配慮義務」では、荷主は自らの貨物に関して安全性を最優先に考える責任を負っています。
また適切な包装や取り扱い指示、安全に関する情報提供を行わなければいけません。
運送事業者だけでなく、荷主も物流業界やドライバーの安全と福祉を守る役割が求められています。
トラックドライバーの減少と高齢化
現代の物流業界では、トラックドライバーの減少と高齢化が深刻な問題となっています。
この問題は「荷主の安全配慮義務」が新設される理由の一つとなりました。
国勢調査をもとにしたデータによると、ドライバーの数は平成7年をピークに減少を続けています。
平成7年には98万人だったドライバー数は、平成27年には76万人まで減少しました。
ネットショッピングなどのECサイトが発展し、物流量が増えているのに対して、ドライバーは減っていることになります。
また、高齢化も物流業界における大きな懸念事項です。
平成30年の労働力調査によると、道路貨物運送業における45~49歳の割合は、全産業の割合と比べて高いとされています。
全産業:32.8%
道路貨物運送業:44.8%
ドライバーの高齢化は単なるドライバー数の減少につながるだけでなく、知識や経験を失うことにもつながりかねません。
拘束時間の増加
ドライバーの拘束時間が増加したことも「荷主の安全配慮義務」が新設された理由のひとつです。
経済の発展に伴い競争が激化した結果、迅速かつ柔軟な運送が求められるようになりました。
柔軟な対応をするためには、荷物の受け取りや配送が決まってからドライバーが出勤するのでは間に合いません。
結果として先にドライバーを待機させ、荷物の受け取りを待つ「荷待ち時間」の増加を引き起こします。
荷待ち時間が増加することで、ドライバーの拘束時間が増えることも分かっています。
平成27年の「トラック輸送状況の実態調査」によると、荷待ち時間がない運行の平均拘束時間が11時間34分でした。
それに対し荷待ち時間がある運行の場合は、13時間27分と約2時間も長いことが分かります。
運送事業者の労働時間のルール
荷主が運送事業者に対して適切な配慮をするためには、運送事業者が守るべき「労働時間のルール」を学ぶ必要があります。
もしも荷主として労働時間のルールを知っておかなければ、運送事業者は法令を守れなくなってしまいます。
法令を守れなければドライバーの就労環境の悪化や、企業としての信頼低下につながりかねません。
またルールを守ることは、安全上においても大きな役割を果たします。
長時間の拘束や運転をさせることは疲労の蓄積につながる可能性が高く、交通事故などのリスクを高める要因になりかねません。
ドライバーが運転に集中し、安全に運転できる環境づくりが荷主にも求められています。
加えて運送業者と荷主の、良好な関係を構築するためにもルールをよく理解しておきましょう。
配慮の意思があってもルールを知らなければ、無意識にドライバーに無理をさせてしまう可能性もあります。
安全配慮の具体的例
ここでは、荷主として具体的にどんな配慮をすべきかを解説します。
- 非合理な到着時間の設定
- 手待ち時間の恒常的な発生
- やむを得ない遅延に対するペナルティの設定
- 積み込み前に貨物量を増やすような急な依頼
適切な配慮ができるように、自社のケースにあてはめて考えてみてください。
1.非合理な到着時間の設定
荷主が安全配慮義務を果たすためには、ドライバーに対して非合理な到着時間を設定してはいけません。
荷主は物流の効率性や自社のスケジュールに基づいて到着時間を設定する必要がありますが、ドライバーの安全性に影響を及ぼす場合があります。
例えば、到着までの時間を過度に短く設定すると、ドライバーは安全な速度での運転や適切な休息を取ることが難しくなります。
また、交通渋滞や天候の悪化など予期せぬ状況が発生した場合でも、到着時間を守るために無理な運転を引き起こす可能性もあります。
到着時間を設定する場合は、現実的かつ合理的な配慮を行うことが重要です。
ドライバーの適切な運転時間や休息時間を考慮し、余裕をもったスケジュールを組むことで、安全性と効率性の両方を確保することが可能です。
2.手待ち時間の恒常的な発生
手待ち時間が恒常的に発生しないような配慮も、安全配慮義務を果たすためには重要です。
手待ち時間とは、ドライバーが貨物の積み込みや荷卸しを待っている時間を指します。
一般的には貨物の積み込みを行うローディングドックの混雑や、手続きの遅延などが原因で発生します。
しかし手待ち時間が頻繁に発生し長時間にわたる場合、ドライバーの労働条件や安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。
荷主は手待ち時間を最小限に抑えるために、効果的な管理方法を導入することが重要です。
例えば、配送先とのコミュニケーションを強化し、積み込みや荷卸しの手続きを円滑化することが手待ち時間の削減に役立つことがあります。
またスケジュールの適切な調整やローディングドック利用の最適化など、効率的な物流プロセスの確立を目指しましょう。
3.やむを得ない遅延に対するペナルティの設定
運送業界では、時には予期せぬ遅延が発生することがあります。
天候の悪化や交通事故、突発的な道路工事など、ドライバーのコントロール範囲外の要因によって遅延が生じることは避けられません。
しかし荷主が遅延に対して過度なペナルティを課した場合、ドライバーは安全よりも時間厳守を優先するリスクを抱えることになります。
具体的には、荷主は遅延に対して一定の理解をもって柔軟な対応を取ることが重要です。
例えば、予想外のトラブルに備えてスケジュールに余裕を持たせることや、ドライバーとのコミュニケーションを通じて状況を把握することが対策として挙げられます。
4.積み込み前に貨物量を増やすような急な依頼
運送ドライバーの安全を守るためには、積み込み前に貨物量を急に増やすような依頼も控えましょう。
積み込み前に貨物量を計画以上に増やすような依頼は、ドライバーの負荷や安全性に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
運送業者は事前に荷主と打ち合わせた内容によって、適切な積載量の車両を用意します。
もし積み込みに行った先で急に計画以上の貨物を依頼された場合、制限を超える量の荷物になるかもしれません。
また貨物量の急な増量は、積み込み作業の時間や労力が増えることにつながります。
ドライバーは積み込み時間も含めて、全体のスケジュールを計画するのが一般的です。
計画にない荷物も依頼されると、計画が狂うほか予定外の労力が必要になります。
ドライバーの安全を守るためにも、急な依頼が発生しないようにしっかりと打ち合わせを行いましょう。
まとめ
今回は「荷主の安全配慮義務」について解説しました。
内容を簡単にまとめると以下のとおりです。
- 「荷主の安全配慮義務」はドライバーを守るためのルール
- ドライバーを守ることで安定的なドライバー確保につながる
- 荷主は労働時間のルールを知ることが大切
荷主勧告制度が拡充されるなど運送業者を守るための「荷主の安全配慮義務」は、最終的には荷主のメリットにもつながります。
安全で適切な運送をすることで、安定的な商品や製品の供給により社会の発展に寄与することが可能です。
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