この記事は、ある運送会社に勤める運行管理者さんに執筆していただきました。弊社にとっても、2024年問題といわれる働き方改革に取り組んでいますが、多くの運送会社にとっての共通の課題となっています。
以下、本文です。
2018年7月6日に「働き方改革関連法」が政府から公布されました。
その中で時間外労働の上限規制が、大企業では2019年4月・中小企業では2020年4月からと段階的に施行されています。
しかし、自動車運転業務(トラック・バス・タクシーなど)は慢性的に長時間労働になりやすい業種であることなどから、2024年4月まで執行猶予期間
が与えられました。運送業界は2024年4月までに、大幅な改善をし「働き方改革関連法」を順守できる体制を作っていくことが必要となりました。
ここでは2024年問題の概要や、現在の問題点、各運送会社の取り組みなどを、運送会社勤務の現役配車係がリアルな視点で深堀りしていきたいと思います。
2024年問題とは?
「働き方改革関連法」
「働き方改革関連法」とは、昨今の人手不足、長時間労働など現在のあらゆる問題点を改善するべく設けた、新しい労働基準法です。
時間外労働の上限規制
運送業界に最も影響があるのは、労働時間に関する法案となっています。ここでは労働時間の上限について、簡単にまとめていきます。
時間外労働の上限
月45時間・年間360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えた労働ができなくなります。
特別条項付き36協定を締結した場合
時間外労働は年間720時間、時間外労働+休日労働の上限月100時間・2〜6ヶ月の平均80時間以内となっています。また、月45時間を超えることができるのは年間6ヶ月までとなっています。
特別条項付き36協定を締結した場合(自動車運転の業務)
年間960時間の時間外労働の上限規制のみ。月単位での上限などはなし。
自動車運転の業務については譲歩されている部分も大きいが、将来的には一般と同じ扱いになる可能性がある。
2024年以降に上記の規則を厳守できず違反となった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金になる可能性がある。
年次有給休暇の年間5日獲得を義務化
年次有給休暇のうち、年5日については使用者が時期を指定して獲得させる事が義務となりました。
これまでの年次有給休暇を獲得しづらい環境を、改善する事が求められています。
運送業界の現在抱える主な問題点
現在各運送会社は2024年問題が差し迫る中、さまざまな問題点を抱えています。
そこで抱えている問題点と、問題を解決するためにおこなっている取り組みなどを紹介していこうと思います。
乗務員不足
現在運送会社の有効求人率は、他業界の有効求人率の倍近くになっています。
その原因として、労働時間は他業界の約2割多く、賃金は約2割少ないという調査結果もあります。
更に免許制度の変更もあり、若い人材がトラックを運転するためのハードルが昔に比べて上がっている。
労働時間規制による収益減
労働時間規制により、乗務員の運行できる時間が減少するため輸送効率が低下し、収益減少につながる。また、労働時間には客先での荷待ち時間や、空車回送の時間も含まれている。
一日で10時間労働した乗務員の、一日の荷待ち時間が4時間にも登る場合などもあり、労働時間を効率的に輸送に使えていない場合なども多くあります。
問題点を解決するための取り組み
これまでの運送会社は長距離運転・長い荷待ち時間・キツイ荷物の積み下ろし・休日が少ないなど決して労働環境がいいとは言えないような企業が多く存在しました。そこで多くの運送会社は、労働時間の短縮や乗務員の給料を確保するための努力が必要になっています。
1つ目の取り組み
1つ目の取り組みは、混載や中継を駆使した輸送の効率化を目指しています。効率的を図るためには、荷物を集約できる拠点の確保や、営業所間・同業他社間の横の繋がりを強める
ことによる、効率的な配車の実現が必要になってきます。
各運送会社は荷物を集約する倉庫の設立や、方面別に荷物をまとめることにより輸送の効率化を図るための、システムの開発などを積極的におこなっています。
2つ目の取り組み
2つ目の取り組みは、荷主様との連携による荷待ち時間の削減・適切な売上を確保するための運賃交渉になります。現在2024年問題での労働時間短縮の他にも燃料や物価の高騰により、荷主様への輸送運賃の値上げ交渉が急務になっています。
『燃料サーチャージ』や『標準的な運賃の告示制度』を用いた、荷主様への輸送運賃値上げ交渉を各運送会社がおこなっています。
また、荷待ち時間を削減する為、オンラインでの荷積み時間予約制を導入しています。オンラインで予約をすることにより、無駄な荷待ち時間を削減し、輸送の効率化・労働時間の短縮の効果が期待できます。
3つ目の取り組み
3つ目は業務の簡素化や輸送の定期化を図り、誰でも簡単に業務をこなせるようにする事です。これにより、有給休暇を容易に申請しやすくし、これまでの休みづらかった環境を改善できます。
誰かが休んでも、他の誰かが同じように業務をこなせることで、シフト制を導入することもでき、ひいては業務の効率化にも繋がります。
まとめ
今回は『働き方改革関連法』により、日本社会の働き方が変わっていく中で、運送会社にも変化が求められていることによる「2024年問題」について考察していきました。
現在は運送会社だけでなく、全ての企業がより良い労働環境を作っていく段階にあります。
今まで特に労働環境が悪いとされていた運送業界も、これからは労働環境を改善して、働きやすい企業としていくことが至上命題となっています。
各運送会社は「2024年問題」をきっかけとして、より働きやすい企業になるよう努力しています。
参考資料
全日本トラック協会働き方改革特設ページ
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